ファンの皆々様、
寒い日が続きますが如何お過ごしでいらっしゃいますか。
オーケストラ・リベラ・クラシカは今年も楽しいプログラムをいろいろと
予定しておりますので、お友達もお誘い合わせの上コンサートにお出かけ
下さるようお願い申し上げます。第8回のコンサートはもう目前に迫って
きておりますが、まずは先日行いましたOLCの特別プログラム、「四季」
のプロジェクトについてご報告申し上げます。
本来私たちはクラシック専門という趣旨で集まったわけですから、建前と
致しましてはバロックを演奏しないのですが、別にバロックを嫌っている
わけではありませんし、また個人的には皆、バロックも日常的に弾いてい
る奏者たちです。もちろん、だからこそOLCではクラシックに集中する
ということに意味があるわけですが、今回は是非ともOLCにという有難
いご要望を頂戴しましたので、「特別」とした上で演奏させていただきま
した。
静岡でのコンサートはホールが親子連れの市民を招待する企画でしたから、
ホールの半分ぐらいは子供たちでした。ファンの皆様はよくご存知の通り、
「四季」には、ヴィヴァルディ自身のものと思われる詩がつけられており、
さらに曲中の各箇所にも、楽譜の余白がないほどに指示が書かれています。
それは演奏の指示ではなく、ここは何の音、これは何の動物といったもの
ですが、とても細かいので、自分で弾かれる方やよほどよく聴かれる方で
なければその全部を知っておられるとは限りません。そこで今回のコンサー
トでは、1曲通して演奏する前に私が書いてあることを喋り、その部分の
音を少しずつお聴きいただくことにしました。もちろんそんな企画はイ・
ムジチをはじめ全てのグループが幾度となくしてきたことではありましょ
うが、やっぱりもう一回やっても面白いもの、そしてまたヴィヴァルディ
はいつ聴いてもいつ弾いても、本当に素晴らしいものなのです。正直なと
ころ、思ったほどに子供たちから笑いは起きませんでしたが、それについ
ては、私の話が面白くなかった、言われたものの音に聞こえなかった、コ
ンサート会場では笑っちゃいけないと親に厳しく言い含められてきた等々、
さまざまな理由が考えられます。名古屋、しらかわホールのコンサートは
一般の方々のコンサートでしたが、やはりそのような細かい辺りを少しお
話しして聴いていただきました。先にネタをばらしちまうのかぁ、と感じ
られた方もお出でかもしれませんが、大方の皆様には喜んでいただけたも
の、と信じております。
今回私たちの練習で一番難しかった描写はおそらく、ハエの群でした。大体、
近頃東京では犬の糞も落ちていないし、若い世代は馬糞も知らないでしょう
し、ごみはきれいに片づけられるし、街を歩いていてハエが何かに黒くた
かっているところなどめったにお目にかかりませんね。五感の記憶にない
もの、しかもきれいでないものを「描写」するのは困難です(じゃあ、ニ
ンフの踊りは?と言われると困りますが、こちらはまあ、映画の世界やピー
ター・パンなどで補うこととして…)。あの「夏」の第2楽章は、いろい
ろに妨げられて眠りたいのに眠れないところですから、不快・不安な音楽
でなければならないのですね。それから、「春」の第2楽章は嬰ハ短調と
いう調性ですが、今回初めて、やや神経質に鋭いその響きが場面の設定と
関係しているのかもしれない(つまり羊飼いではなく、わざわざ山羊飼い
とされていること)という感じを持ちました。もう一つ、有名な「冬」の
第2楽章で、ヴァイオリンのピツィカートとチェロの細かい音型だけがフォ
ルテになっているのは何故だろうと前々から考えていたのですが、それは、
曲の情景が暖炉のある部屋から外を見ているのではなく、雨の降る外にい
て、窓の中に暖かい部屋が見えるところだからなのだ、と思い当たりまし
た。こんなことはどれも、何度も弾いている方なら当然のことばかりかも
しれませんが、あまりにも有名で、かえってあまり演奏の機会がないもの
ですから、このようなディテールを新鮮に楽しむことが出来ました。
今回のコンサートでは、もっとも一般的に使われているアムステルダムの
初版ではなく、マンチェスターの図書館に保管されている筆写譜をもとに
演奏しました。ベーレンライター社からそれをベースとしたスコアが出版
されており、Ch. ホッグウッド氏が序文を書かれています。細々とした差
異が興味深く、また音楽的で、一見の価値ありと思います。
「四季」とともに演奏致しました2曲のチェロ・コンチェルトはどちらも
最高に楽しく、美しい曲です。何とか近い将来に東京でも演奏し、そして
また録音もしたいと考えておりますのでお楽しみになさっていて下さい。
さてもうすぐ、20日にはいつものハイドン・モーツァルトに戻ったコン
サートが待っています。今回は軽快な「アレルヤ」、暗い情熱第52番に
挟んでモーツァルトのヴァイオリン・コンチェルトをお送りします。また
浜離宮朝日ホールで皆様にお会いするのを心より楽しみにしております。
どうぞお出かけ下さい!
鈴木秀美 (2004/2/8)
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