| 第17回カフェのアフター・テイスト
2004/04/25 |
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皆様、 昨日は長い時間ご静聴下さり感謝申し上げます。また受講された方々にも感謝 申し上げます。多少時間の長短もありましたが、なにか有益なことを発見していただ けたなら幸いです。 昨日もお話し致しましたように、ベートーヴェンの曲、特に初期の作品は「たったの」 2楽章しかないにもかかわらず長くて、またその中にいろいろな要素がいっぱい詰まっ ているものですから、ただ演奏するにも、またそれを読み解くにも時間がかかってし まいます。結局昨日は第1楽章を4人で3時間、第2楽章を3人で2時間余りかけて 読んでいったわけですが、まあ、一般的な公開レッスンなどでどんどん違う曲が登場 することを思えば、弾くときも聴くときも話題は同じですから、理解の助けになった のではないかと思います。 カフェでお話ししましたように、ベートーヴェンはこのチェロ・ソナタ をもって「二重奏ソナタ」という、それまでになかった新しい合奏形態を確立しまし た。合奏の中にあってチェロは、低音を弾いていてたまに旋律を与えられるというの ではなく、また高いポジションに駆け上がって曲芸的な技巧を披露するというのでも ない、音域全体を使ってピアノと対等な立場にあるパートとなっているのです。です から演奏するときには、自分のパートが全体の中でどういうウェイトを占め、どうい う音域にいるかを認識することが重要です。全体を旋律・中音域・低音と分けて、自 分が今どの層にいるのか、ピアノ・パートのどの部分と連携しているかをよく知り、 それに相応しい音量・音色・音圧を与えるようにしなければなりません。それによっ て、ただピアノとチェロのみの合奏がオーケストラのように響き、しっかりした構造 を作り上げることができるのです。 このソナタはまことに、至る所でオーケストラ的な響きを持っていて、近い時期に作 曲された交響曲第1番やピアノ協奏曲第1番などを彷彿とさせます。別の楽曲を連想 しながらこのソナタの響きがどうあるべきかを考えるのは、有効であるばかりでなく この上なく楽しいものです。私自身はこれを弾いているとき、しばしば自分がソナタ を弾いているのだということを忘れそうになり、オーケストラの中にいるような気が する時もあります。「チェロ・ソナタ」と呼ばれてはいるものの、これはチェロとピ アノのみを使って表現するシンフォニーだと考えれば、実にたくさんの役割をこなす ことに(こなせることに)なり、忙しいと共にこんなに楽しいことはありません。若く、 喜ばしく、ユーモアに富んでいる、忘れられがちなベートーヴェンの一面をこの曲は 余すところなく表出していて、奏者・聴衆両方に大いなるエネルギーを与えてくれる のです。昨日のカフェは、そのことを少しでも再認識するのに役立ったでしょうか?? 昨日はまた、ベートーヴェン自身も愛用したワルター・モデルのフォル テピアノと約100年後に作られたエラールの両方を用いて、(同じ名前で呼ばれるも のの)楽器が変化することによって音楽がどう変わるのかを目の当たりにするという意 味でも興味深い実験ができたと思います。それぞれの楽器が時代と共に「発達」した のだとしても、ある状態での合奏を想定した曲にとってその「発達」は必ずしも寄与 しないという、皮肉な現実が聴き取れたのではないでしょうか。 さて、次回10月9日はバリエーション3曲を取り上げる予定です。今回 ピアノの清水由紀子さんには両方のピアノを弾く大活躍をしていただいたわけですが、 バリエーションのピアノ・パートはさらに大変とも言えますので、ピアノまたはフォ ルテピアノで受講される方も大いに歓迎したいと思っています。それにつきましては またこのページ上でお知らせ致しますが、どうぞ皆さん奮ってご参加下さいますよう、 お誘い申し上げます。 最後になりましたが、今回もまた親密な空間をご提供下さり、また美味 しいおにぎりとお汁を準備して下さった實相寺の酒井紀久子さん、そしてこのカフェ の実現にいつも尽力して下さっている中尾晶子さんと江浦仁美さん、その他準備のお 手伝いして下さった皆様に心から感謝申し上げます。 では皆様、次回お会い致しますまで、力強く爽やかなベートーヴェンを 心に抱いてお元気でお過ごし下さい。
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