第14回カフェ後のご挨拶
2003/6/2

  ガット・ファンの皆様、

  先日は素晴らしい「ガット日和」の中、第14回のカフェにおいで下さり有難うございました。 まったく、どうして人がガットを弾こうというと雨が降るのか…苦労が多ければ喜びも多い、と毎回神様は 教えてくださっているのでしょうか。これから秋口まで苦労の絶えない時期がまたやって参ります。皆さん がんばって苦労を共にしましょう…。


  さて、今回はヴァイオリン・ソナタのコンティヌオでした。テレマンとバッハのソナタの楽しく 充実した響きをお楽しみいただけたでしょうか。上声部を支えて、弾きたいように弾かせてさしあげる バスを弾きながら、同時にバス同士でもよくコンタクトを取ってぴたりと合わせる。これはなかなか 簡単なことではありません。タイミングや表現も、そして音程も、ですから。

  その昔通奏低音を弾き始めたころにはまず、全部の音を「正解」付きで弾くのにもう 悲鳴を上げたかったものでした。音程は、殆どの場合和声の肉付けがある鍵盤楽器が正しく聞 こえるのです。耳だけではどうしても間に合いませんから、調律を少しは理解し、その調性の傾向 を知っておかないと、合わせて弾くことが難しいですね。

  もう一つ大切なことは、全体の音量を考えることです。チェロとチェンバロが一体と なって旋律楽器と混じり、そこに一つのアンサンブルの音像が出来上がる。そのとき、自分の音 が突出していないか、或いは不十分でないかを即座に判断するようにしなければなりません。時 には、音楽的必要性、例えばそれが和声上大切な音であるとかテーマの出だしだとかいうことで、 全体の雰囲気よりも大きく弾かなければならないこともあり、またその逆もあります。自分の楽器 の音から離れた客観的「耳」を持つこと、これはコンティヌオ奏者にとって最重要なことです。

  旋律楽器も弦楽器のときには、音の出だしと終わりだけでなく、音のシェイプを 合わせるために弓のスピードを合わせることが大切です。言い換えれば、もし管楽器であれば 見えない息であるものが見えるのですから、こんなに有難いことはありません。タイミングも、 弓が弦に触れるその場所を見ていればとても合いやすくなります。音をぴたっと合わせるために、 ときには左の指使いを見て合わせることもあります。バス・パートの音符の数はたいてい旋律より 少ないのですから、できる限り楽譜から目を離して、共演者の具合を見ながら弾くことも大事 ですね。


  バスの中には、どんなに大きな箇所、遅い楽章などであっても、短く軽くなければ ならない音があります。そのようなとき、右手のコントロールが必要なのはしばしば、音と音の間 です。そこに、バッハの無伴奏組曲を弾くときとの関連性があるのではないかと思い、中でも 比較的忙しいクーラントを題材としてみましたが、何か関係を発見することができたでしょうか。 コンサートでは、クーラントばかりを並べて演奏してみましたが、これはこれでかなり難しいことで あった、と痛感しております。しかし興味深い経験でもありました。

  さて、久々のテレマンにとっても喜んでしまった私達「バロック愛好者」は、 打ち上げの席で、もうちょっとこれを続けようではないかという気分が高まってきました。 そこで、次回8月30日は、ヘンデルのソナタとトリオ・ソナタを題材に取り上げたいと 思います。共演には今回同様、荒木優子さんと重岡麻衣さん、そしてフルートは 前田りり子さんにやっていただけることになりました。具体的な曲については近々 またこのページ上で発表いたしますが、どうぞ皆さま、後期バロック室内楽の響きを 愉しみ、その味わいの深みを探るガット・カフェに、ご友人もお誘い合わせの上 お出かけ下さい。

店主敬白

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