第12回ガットカフェを終わって
2002/11/18

  オペラシティ内の近江楽堂を離れて最初の今回は、池上の実相寺をお借りして行いましたが、カフェ・コンサートとも部屋いっぱいにお集まりいただき、感謝申し上げます。

   今回のテーマは「チェロの二重奏」、テクニックのことも話すことが出来て充実した時間だったと思います。いつものことですが、人によって時間が長かったり短かったりいたしましたが、どの演奏からも何かを吸収するというふうに全体で一つとお考えいただき、ご了承くださいますようお願いいたします。

   チェロの二重奏には、一人がソロでもう一人がバスとはっきり分かれているものと、お互いに旋律を弾きあい、またバスを弾きあうというふうに交代するものとがあります。今回の課題ではポッパーとロンベルクが前者、チリが後者でした。前者では、もちろん旋律が十分に起伏を持って奏され、低音がそれをしっかりと支えつつ色合いを加えることが期待されますし、後者ではパートの交代を対話のように楽しまれることが期待されます。

   演奏の技術的レベルはいろいろだったと思いますが、どちらの場合にも通じて言える事は、皆さん楽譜の読みが浅いということでしょうか。楽譜の中に隠されているいろいろな差異が十分に認識されていなかったようです。フォルテやピアノ、クレッシェンドなどの記号がなくても、音の高低や長短、音程、小節内の位置(何拍目かということ)、和声の進行やフレーズのでき方などによって、ある音は強く、また弱く弾かれ、またあるときは長めに、あるときは短めに音を弾くといった対処が必要です。それは音符そのものから読み取るのであり、何か記号が付いているからどうするというものではありません。記号は後からできたものですし、記号に頼れば記号のない音の処理が分からなくなり、音楽の本質は見えなくなっていくのです。

   あるいは、感じたことをどれぐらいやれば人に伝わるかという程度が問題だったのかもしれません。楽譜から違いは読み取っていたが、表現が足りなかったということですね。演奏が自己満足に終わらないでいるためには、何かを弾いて表現し、聴いた人の心の中に何かが起きる(望むらくはその内容に共感する)ところまでを考えなければなりません。また、演奏にほどよく変化をつけることも大切です。全部弱く弾いてしまっては力ない演奏になりますが、全部大きく弾いても結果はあまり変わりません。変化がなくては、どんな美しい音でもどんな大きな(小さな)音でも退屈してしまうからです。芸術の世界では、すべてを大切にすると何も大切にしないのと大差ないという皮肉な現象が起きます。それはお話などでも同じで、いかによい内容できちんと話していても、調子が変わらず緩急をつけずにいればものの数分で眠くなるというわけです。八分音符ばかりが並んでいても、同じ役割のものはひとつもありません。「”Indifference”は芸術の敵」と肝に銘じていたいものだと思います。

   …と、人に言うのは簡単ですが、夜のコンサートは果たしてお楽しみいただけたでしょうか。忙しい予定をやりくりして来ていただいた古川君と、二人して汗だくのコンサートでした。ドッツァウアーのユーモア、ロンベルクの充実した音楽、そしてポッパーの魅力溢れる旋律と幻想的な和声をお楽しみいただいたはずですが…結果についてはお聴きいただいた皆様のご判断にお任せいたしましょう。いつかまた、コンサート・ホールでもお楽しみいただきたいと考えています。


   実相寺のご住職の酒井さんと奥様の紀久子さんのご好意で、コンサート終了後は美味しいおでんなどをつまみながらの楽しいパーティも持つことが出来ました。また、今回のカフェを催すにあたって多大な協力をいただいた江浦仁美さん、中尾晶子さんほかの方々に、心から御礼を申し上げます。

   さて、次回のカフェは2003年1月18日、会場は三鷹YWCA(JR三鷹駅北側徒歩3分ほど)をお借りすることになっていますが、課題はまだ決定しておりません。近いうちにこのページ上でご案内させていただきますので、どうぞご覧ください。


Let’s GUT!!

店主敬白

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