ガット・カフェ第11回『コンティヌオのウラ・おもて』のアフター・テイスト
2002/7/19
   ガット・ファンの皆様、

  先日は11回目のカフェにおいで下さり、有難うございました。

  コンティヌオのウラ・おもて、「オルガンとの場合」はいかがでしたでしょうか。

  オルガンと一緒に弾くこと自体、そしてまた弾き方などについて話す機会はそう多くはないと思われましたので、少しばかり調律の基本的なところをお話しし、またオルガンの構造や特徴などについて、今井さんからもお話ししていただきました。

  お分かりのとおり、いったん出た音は離すまで一定で消えないのがオルガン、調律法がもっとも問題になるのも当然ですし、一緒に弾く側にとっても音程が気になる楽器です。音の減衰のシェイプを作り出すのは部屋の残響、そして言うなら聴衆の記憶と想像力です。その上、弾いた方はお解りだと思いますが、何というかオルガンは音の成分のどこかを吸収してしまうように感じるのです。オルガンの音とチェロの音のある部分が溶け合って、一緒に弾いていて聞こえるのはゴミゴミした自分の音、雑音の部分だけのように感じるのですね。しかしまあ、それも慣れ。そのうち、そう聞こえるだけの時と、本当に自分の音がガサガサしている時(!)との区別がつくようになるでしょう。

  オルガンは、幾つかのストップがあって、それの加減、また組み合わせによって音量や音色が変わりますが、基本的にどの(パイプの)列も、一番上の音がメロディとして際だって聞こえるようにできています。低音はどうしても少し弱くなり、音の輪郭の明瞭さが足りなくなりがちです。その低音を補強して支え、またその表現力を増すのがチェロの役目ですから、二つは渾然一体となっていなければならず、チェロがあまり遊離して聞こえすぎていては「コンティヌオ」の役をなしません。まるでオルガンの一部のようであるのが基本的なバランス、そして必要なときにだけ、十分な旋律性をもってバス・ラインを聞かせるようにすることが大切です。

  今回のカフェでは専らアリアが題材でしたからあまり話しませんでしたが、オーケストラの中でコンティヌオを弾いている場合、コンティヌオはオーケストラ全体のバスでもあるわけですから、オルガンとの混じり方もやはり、「オーケストラ用」と「アリア用」で少し変わってきます。完全にオルガンに溶けているだけでは、オーケストラのバスとしての役割には不十分で、ある程度の音圧、音の密度が必要です。強いて言えば、オルガンによって和声感を補強されたチェロのように聞こえることもできるでしょう。

  音程に注意し、オルガンとの溶け合い方を気にしつつ、しかし十分な表現力を持ってバス・ラインを弾く塩梅はなかなか難しいものです。参加された方全体に言えることだと思いますが、概しておとなしすぎ、表現が足りない感じです。オルガンはたしかに一音の中での増減が出来ませんが、それを補強するのがチェロですから、音楽に何が必要かを十分に感じ取っていなければなりません。皆さんのオルガンとの共演のチャンスがさらに増えることを期待しております。


  ガット・カフェとそのコンサートは、いつも素晴らしいヴォランタリーのご支援によって成立しています。今回も、オルガンを運んできて自分で調律もしてくださった今井さんに加え、再び長時間に渡って懸田奈緒子さんに歌っていただきましたし、夜のコンサートでは荒木優子さんにヴァイオリン・オブリガートを弾いていただきました。お三方に拍手喝采し、心からお礼を申し上げます。


  さて、約2年余りにわたり、カフェは近江楽堂で続けてきました。バッハの無伴奏組曲のマスタークラスから数えると3年になりますが、事務体制側の諸事情により、今回をもって、バッハ・コレギウム・ジャパン事務局の手を離れることになりました。また場所も、この先弦楽器のアンサンブルや古典派に近いものも取り上げたいと考えておりますことから、近江楽堂の音響が必ずしもベストとは言えず、別の場所を考えております。次回、第12回は11月16日を予定しており、それは変わらないつもりですが、場所、そして申し込みなどの体制については、このページ上でまたご案内させていただきますので、しばらくお待ち下さい。

  では皆様、よい夏をお過ごし下さい。また秋に「新生」ガット・カフェでお会い出来ますことを願っております。

店主敬白

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