Gut Café

ソーセージ(の皮)愛好者の皆様、

 

 先日は、中身の入っていないソーセージ(つまりガット)でさえ腐るかとも思われたほどの酷暑と湿気のなか、カフェに再びおいでいただき、まことにありがとうございました。前回よりも心なしか少なめのお出まし、これは酷暑のせいか、フレンチ・ソナタの馴染みのなさか、はたまたこんな下らぬカフェでつぶすヒマなどそうたくさんの方にはない、ということか...などと若干の思案を致しております。

 しかし、カフェそのものの内容は特に1回目に劣るものではなかった、と信じております。2回を通じて、たいへん大まかながらイタリアンとフレンチの関係と趣味の違いなどを味わっていただけたのではないでしょうか。そう、この二つはそれぞれ、己の優位を主張するものの、実はとても深く繋がっていてはっきりと線を引きにくい、切っても切れぬ縁なのであります。また、音の扱いや表現などが、チェロという楽器に留まらずにガンバやクラヴサンの曲、またオペラなど、他の分野を知ることによって触発され想像力を刺激して、よりよい理解に繋がるということもお判りいただけたのではないでしょうか。事務局の助けをお借りして楽譜がある程度準備できたのもよかったと思います。

 

 さて、18世紀の音楽を語るのに最重要な二つのテイスト、イタリアンとフレンチを味見した後、次回は何をするべきか。ジャーマン、というのは結局混合的な様式なのですし、チェロ曲ということを考えますと適当な材料があまり多くありません。一方、演奏ということを考えますと、技術的なことへの皆さんの興味を毎回強く感じます。そこで、まるでしりとりかスゴロクのようにイタリアン〜フレンチ〜そこからどっちへ進むか...と考えていた店主は、フレンチデュポールエチュード皆が「やらされたもの」ドッツァウア!!という別の経路を思いついたのでありました。そこで、先日いらした方にはもう申し上げましたが、次回の素材は『デュポールとドッツァウア』とすることにいたしました。

 エチュードとは音楽なのか、音楽たり得るのか、と思われますか?私たちはあまりにもしばしば、これらの名前が尊敬するべき先達チェリストのものであることを忘れてはいないでしょうか。そう、必ずしもそれらの全てが人前で弾くことを想定はしていないかもしれません。また、指や弓の訓練のため、筋力トレーニングの様相を呈しているものもあって、どれでもが楽しめるものでないことはたしかです。しかし、重要なチェリストだった彼らの音楽には、何か良い味もまたしっかりと存在するのです。

 ドッツァウアは、このようなエチュードだけではなく数多くの作品を書いています。チェロ2台、チェロとヴァイオリンなどのデュエット、室内楽、ミサ...デュポールのエチュードは、重要な文献でもある実に立派なチェロ・メソードの最後に載っているもので、この本こそが現代のチェロ奏法の基本、根幹をなすものなのです。

 

 当日の題材、デュポールの方は例の21の練習曲、Simrockから現代に出版されているHugo Becker版をお薦めします。ペーター版は不可。ドッツァウアの選曲についてはもう少しお待ち下さい。楽譜は、ペーター版をはじめ、多分何でも結構、と言わざるをえないでしょう。なお、このような曲ですから、ピッチは440、弓や楽器もモダン、バロックどちらでも構いません。もちろん、バロック弓でこういうものを弾くのは時代的には間違いですが、なおそこから多くを勉強することが出来ます。

 

 最後に、個人的なことですがちょっとした事情をお話します。

 今回のカフェの前の週、私は16年にわたったヨーロッパ生活に一応ピリオドを打ち、向こうを引き払って参りました。しかしながら、何といっても今年は2000年、行ったり来たりの生活はさほど変わりません。というわけで、第3回の時も、9月1日にようやくヨーロッパから帰ってくる予定でおります。ですから、この作曲家たちでフルのコンサートを満たすだけの準備が殆ど不可能なのであります。また実際、殆どの自分の楽譜はその頃まだ引越荷物の船の上、今手元にあるものでしか準備を進められません。そこで、これはまだ決定ではありませんが、レッスンの時間をいつもより長くし、コンサートは引き続いて、しかし短めに、としようと考えています。

 本当は、数ある素晴らしい2台のチェロのデュエットから何かをご披露したいところなのですが、一緒にやっていただく方を見つけるのも、また練習をするのも殆ど無理な状態です。このような事情で、小島芳子さんに続いて無理をお願いしたのは寺神戸亮君。ドッツァウア作曲、ウィリアム・テルの主題によるDuo Concertantをお聴きいただく予定です。それ以外のメニュは、また後程お知らせいたします。

 

 では、みなさま奮ってのご参加をお待ちしております。なお、急に大勢の方が受講にいらっしゃった場合には、何らかのかたちで選ばせていただくかも知れないことをご了承下さい。

 

 皆様、よい夏の日々をお過ごし下さい。        店主敬白    

次回は9月3日(日)14時から近江楽堂(東京オペラシティ3F)です。


追 伸

 先日ご案内致しましたように、次回のカフェは『デュポールとドッツァウア』というテーマで開催したいと考えています。誰でもが少しは通ってきたであろうこれらのエチュード、一体これはオンガクになるのか。どう弾けばいいのか?どうぞ、見に、聴きに、試しにいらしてください。子供のときにやったものをガット弦の上で再び試してみるのは一興以上のものです。そして、ドッツァウアは言うまでもなく19世紀の人間ではありますが、彼の作品は、バロックを勉強するものにとって実に役に立つのであります。

 さて、このドッツァウア、どの曲を、ということについてはっきり申し上げていませんでしたが、考えた結果、いわゆる『第一巻』と『第二巻』の全曲を対象とすることにしたいと思います。全部弾いてきなさい、というのではありません。それはムカシやったこと。その中から、これなら自分は『オンガク』を表現できる、感動できる、と思われるものを選んで、じっくりとやってきていただきたい。一人一曲で結構です。

 どうぞ、楽しい夏をお過ごしください。まだ腐っちゃいけない「キネヅカ」と共に。

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